●何故結核は減ったのでしょうか?
・衛生状態がよくなったので、感染しにくくなった。
・食生活の改善で免疫機能が高まった。特にたんぱく質栄養の改善。
・動物性たんぱく質の摂取量の増加。
このたんぱく摂取量の増加は同時に脳卒中の発症率の低下ももたらした。
・予防のためのBCG接種で抗体を持った人を増やした。この政策は諸外国とは全く異なっている。アメリカなどは結核に対してツベルクリン反応陽性者は極めて少なく、同反応陽性者は結核感染者として検査を必要とされている。
●栄養学の進歩は周辺の学問の進歩でも、もたらされた
・脂質と脂肪の健康への影響
・食物繊維の健康効果
・たんぱく質栄養の進歩
・様々な食品成分の健康への影響についての研究の成果
・ビタミンやミネラル研究の進歩やそれらの相互作用についての研究
・ビタミンの体内での代謝についての研究
●脂質栄養についての考え方の変化
・コレステロールは悪者?
1.細胞膜の成分
2.ホルモンの原料
3.胆汁酸の原料
・何故コレステロールは悪者にされたか?
・血液中のコレステロールの濃度が高くなりすぎると、動脈硬化を引き起こすことは分かるが、どれ位多くなると、体に悪いか?
●コレステロールと植物ステロールの関係
・人はコレステロールのみ利用(自分でも作るし、食品中のコレステロールもよく利用する。
・しかも、一度腸管に分泌したものも再度再吸収している(これを腸肝循環といっている)
・この作用は食品中の脂肪や脂溶性ビタミンなどと一緒に行われている。
・植物ステロールは吸収できず、大腸から排泄される。それで、植物ステロールはコレステロールの吸収阻害をしていることになる。
●必須脂肪酸の種類と分類
・リノール酸系(n-6):体内でアラキドン酸まで代謝される。リノール酸は体内で作れない。(必須脂肪酸の仲間)
・リノレン酸系(n-3):体内でEPAを経て、DHAまで代謝される。リノレン酸も体内で作れないので、必須脂肪酸の仲間
・(n-6)系と(n-3)系も相互変換できない。
・体内でプロスタグランジンやロイコトリエンなどの生理活性物質の前駆体としても利用される。
・オレイン酸系(n-9):体内で合成できる。ステアリン酸を原料として。
●脂肪酸栄養学の変化
・昔は飽和脂肪は悪く、不飽和脂肪はいい。それで、バターは悪く、マーガリンはよいといわれた。
・また、一時悪者にされたリノール酸(n-6系)は本当に体に悪いの?また、オレイン酸はどうなのか?
・DHA,EPA(n-3系)とどう違うのか?
・最近は、トランス脂肪酸は飽和脂肪よりももっと体に悪く影響するといわれている。
・それで、新聞その他の報道のように、ニューヨークやカリフォルニアでトランス酸含量の高い食品の販売を停止することになった。
・ところで、トランス酸はどんな酸?
●トランス脂肪酸とは?
・元来、自然界には極く僅かしか存在していない。
・天然の植物油や動物油は全てシス型でトランス酸とは空間での配置が違う。
・水素添加油脂で増える。
・反芻動物の脂質やミルクに5%近く存在。
・加熱精製された油脂には、1%程度存在。
・日本の加工油脂(マーガリンやショートニング)ではどうか。水素添加工程や触媒の選択で欧米に比べ、大分含量が低くなっている。今後の研究でもっと下がる方向にある。
・また、同時に植物油由来のリノール酸を摂取することで、トランス酸の人への影響は低くなる。現在、食品安全委員会で摂取量、表示などについて検討中である。
●脂肪栄養についての考え方の変遷
・飽和脂肪(パルミチン酸やステアリン酸に富む脂肪:牛の脂肪や豚の脂肪)は減らした方がよい⇒その理由は、血中コレステロールを下げるようにするため⇒動脈硬化予防につながる。(この考え方は変わっていない)
・多価不飽和脂肪酸(リノール酸とリノレン酸やEPA,DHA)を増やした方がよい⇒血中コレステロールを下げる。⇒しかし、最近はそれぞれの脂肪酸により作用に違いがあり、同一とはいえない。また、オレイン酸にも同じような作用があるので、話は難しくなった。一般にn-6系とn-3系の比率を4:1程度にすると良いといわれているが、それぞれの脂肪酸に作用の強弱があり、その人の遺伝的な体質で疾患へのリスクも異なるので、正確にこの比を決めるのは困難で、日本人の食事摂取基準ではそれぞれの目安量が決められている。
●脂肪(脂質)についての食事摂取基準
・2-29 歳までは、脂質の摂取量は総エネルギーの20〜30%の間にする。(目標量)
・飽和脂肪酸は18歳以上で総エネルギーの4.5 〜7.0 %の間にする。
・n-6 系脂肪酸は年齢で幅が違うが10 エネルギー%未満(目標量)
・n-3 系脂肪酸は年齢で幅が違うが概ね。2.2 〜2.6 エネルギー%以上
・コレステロールは成人男子テで750mg 未満、女子で600mg 未満( 目標量) 。
●最近の植物油の脂肪酸組成の変化
・サフラワー(紅花)油のリノール酸が減り、オレイン酸と置き換わった。
・ひまわり油もリノール酸よりもオレイン酸リッチになり、オリーブ油よりもオレイン酸含量が高い。
・熱帯産のココナッツ油やパーム油、パーム核油も輸入され、従来と異なり、食用にも利用されるようになった。
・日本で使われている植物油の大部分は大豆油と菜種油の2 種類で、他の植物油は量的に少ない。
●血液中のコレステロール値はどれ位が望ましいか?
・動脈硬化学会では、220mg/dlを推奨しているが、自殺とか高齢者のQOL を考えると、250mg/dl位が望ましいという研究者もいる。
・現時点で、全ての要素を入れて考えると220〜250 /dl位に保つのが良いのではないか。
・脂肪酸の種類により、コレステロールへの影響が異なるので、一概には言えなくなった。
・また、血中中性脂肪(TG) の値も高いと動脈硬化的に作用するので、注意が必要である。
●食物繊維について
・1971年にBurkitt博士がアフリカでの医療活動と疫学的な研究から食物繊維が大腸がんの予防に重要だという論文を発表してから注目されるようになった。それまでは、消化されない不必要な食品成分だと考えられていた。
・その理由は人が消化できる酵素を持たないためであったが、その後の研究で大腸で分解されて、鎖の短い脂肪酸(炭素数2,34位の脂肪酸になり、エネルギー源になるとともに、大腸の健康に重要なこと(例:ビフィズス菌の生育に必要で、数を増加させる)が見直されてきていて、エネルギー1,000kcal当り10g程度摂ることが望ましいとされている。ということは毎日20-25g摂ることが望ましい。
・食物繊維は不溶性(水に溶けないもの)と可溶性(溶けるもの)に分けられていて、それぞれに機能が違う。
・可溶性食物繊維は寒天、ペクチンやアルギン酸など。血中のコレステロールを低下させるといった効果が知られている。
・不溶性食物繊維はセルロースや植物の細胞壁を構成している成分で、その他に便通の改善など。
●ビタミン研究の最新の流れ
・ビタミンE 同族体の内、γ ートコフェロールの代謝産物のナトリウム排泄作用
・葉酸の新生児の神経管閉鎖障害の予防効果 ー ー100% ではないが。
・葉酸、B12,B6 などが高ホモシステイン血症を予防し、心筋梗塞の発症率を低下させる。
・抗酸化ビタミンの老化予防。
・ビタミンK の骨粗鬆症の予防効果。
・その他
●機能性食品の開発
・特定保健用食品として多数の食品が保健の用途をもつとして厚生労働省から認可されている。
・こうした機能は食品の3 次機能といわれ、1 次機能(栄養)、2 次機能(味、香りなど)に新たに加わったきのうである。
・医療費の増大で保険が破綻寸前であり、予防の観点から未病の段階で利用できれば、有用と考えられる。
●3大栄養素のバランス(成人)が大切
・たんぱく質⇒17~20 エネルギー%
・脂質(脂肪)⇒25~30 エネルギー%
・炭水化物(糖質)⇒50~70 エネルギー%
・食物繊維は成人で、19-27g(男)、15-21g(女)
・電解質:Na(食塩として8g(女)、10g(男)未満
K、1.6(女)~2.0g(男)を高血圧予防のために。
・微量栄養素
1.脂溶性ビタミンはAとDの過剰摂取に気をつける。
2.水溶性ビタミンにも上限量があるものがある(ナイアシン、B6、葉酸の3つ)
3.微量ミネラルには、摂りすぎると害のあるものがあるので、摂りすぎに注意(Mo,Mn,Fe,Cu,Zn,Se,Iなど)。
<リンク>
栄養改善普及会