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前回までの文祥堂フォーラムのご紹介
第270回 アンコール・ワットの謎
       
〜東南アジア最大の文明はなぜ滅亡したのか〜
2008年3月19日
















 数ある海外の遺跡の中で、我々日本人に最も人気の高いのは、間違いなくカンボジアのアンコール・ワットでしょう。確かに、あの遺跡の巨大さと、深い神秘性に接すれば、誰もが魂を奪われたような思いに駆られるのは当然のことです。
 しかも、周辺のシェムリアップ一帯には60以上もの数の遺跡群が連なっているのです。長い内戦の時代を経て平和が訪れた今、日本からもその日のうちに現地へ行くことが出来るようになりました。世界中から無数の観光客が押しかけ、観光公害が叫ばれる状況にまで至っています。
 しかし、この遺跡群は未だに大きな謎に包まれた部分が多いのです。熱帯雨林のジャングルの中に、なぜあれほどの壮大な建造物が造られたのか。それが、どうして滅亡してしまったのかー。現代の日本にもそのまま当てはまるアンコール文明の本質を、それぞれの遺跡の写真を紹介しながら考えてみたいと思います。
(矢澤 高太郎)




PROFILE ・・・・・・・・・・・・・・・・・

矢澤 高太郎氏 (やざわ こうたろう)
特定非営利活動法人
文化遺産保存のための映像記録協会 理事
元・読売新聞記者


■ 略 歴
1947年 (昭和22年) 栃木県生まれ
1973年 慶應義塾大学文学部卒業
1974年 読売新聞社入社
1985年〜2006年 同社文化部、調査研究本部の歴史、考古学、文化財担当記者として、国内外の遺跡の発掘、発見とそれをめぐる問題等の報道に従事。
古墳と陵墓、近代日本の建造物と土木遺産、アンコール遺跡、中南米のマヤ、インカ文明、ヨーロッパの城郭の問題には特に力を注ぐ。


■ 著書・編著書
『 古代は甦る 』( 社会思想社、現代教養文庫 )
『 日露戦争 ・ 史跡を歩く 』( 読売新聞社 )
『 日本の遺跡発掘物語5 ・ 古墳時代Ⅰ・ 東日本 』( 社会思想社 )
『 日本の遺跡発掘物語8 ・ 歴史時代Ⅰ・ 東日本 』( 社会思想社 )
『 巨大遺跡を行く 』( 読売新聞社 )
『 唱歌・童謡ものがたり 』( 岩波書店 )
『 近代化遺産ろまん紀行 ・ 東日本編 』( 中央公論社 )
『 近代化遺産ろまん紀行 ・ 西日本編 』( 中央公論社 )


■ 現 職
特定非営利法人・文化遺産保存のための映像記録協会理事。
首都圏と関東各県の遺跡、遺産を探訪する「てくてく探検隊」の講師もつとめる。


<リンク>
特定非営利活動法人文化遺産保存のための映像記録協会
てくてく探検隊


■ 講演内容
先生ご自身が撮影された貴重なリバーサルフィルムを投影しながら以下のような要点でお話を進められました。

インドシナ半島の遺跡(カンボジア・ベトナム・タイ・ラオス)
アンコールの諸遺跡
アンコール・ワット中心部の平面図と立面図
アンコール・ワット西参道視覚表現のトリック
アンコール・ワット第一回廊・他のレリーフ

アンコール・トム平面図
アンコール・トム南大門
アンコール・トムのバイヨン寺院
バイヨン寺院第一回廊、その他の浮き彫り

タ・プローム
バンテアイ・スレイ
バンテアイ・クディ

アンコール王朝崩壊の2つの要因
アンコール王朝滅亡と現代日本の状況

■ 講演内容記事
<平成20年3月27日(第2673号)「週刊ビューロウ」より>

 株式会社文祥堂(佐藤義則社長)は3月19日、東京・銀座の本社イベントホールで、第270回文祥堂フォーラムを開催した。
 今回は、矢澤高太郎氏(特定非営利活動法人 文化遺産保存のための映像記録協会理事、元・読売新聞記者)を講師に迎え、「アンコール・ワットの謎〜東南アジア最大の文明はなぜ滅亡したのか〜」をテーマに行われた。
 矢澤氏は読売新聞社文化部、調査研究本部の歴史、考古学、文化財担当記者として、国内外の遺跡の発掘、発見とそれをめぐる問題などの報道に従事。古墳と陵墓、近代日本の建造物と土木遺産、アンコール遺跡、中南米のマヤインカ文明、ヨーロッパ城郭の問題には特に力を注いできた。
 開会に先立ち、市島正之参与があいさつし、「文祥堂とカンボジアは深い関係にあり、いまから30年余前、カンボジアでは教師のほとんどが殺され、校舎や教材などあらゆる物が破壊された時、文祥堂は24時間テレビに協力して1982年からカンボジアに教科書を印刷できる工場を建設した。その10周年を記念して、92年にはアンコール・ワット遺跡写真展を開催し、多くの人に楽しんでいただいた。それから15年が経過し、カンボジアは飛躍的に復興して旅行しやすくなった。既に訪れた方は思い出をもう一度、これから行かれる人は貴重な資料にしてほしい。本日はアンコール・ワットの素晴らしさとその本質の意味をわかりやすく伝えてもらえると願っている」と述べた。
 講演テーマについて、矢澤氏は「アンコール・ワットの遺跡群は未だに大きな謎に包まれた部分が多い。熱帯雨林のジャングルの中に、なぜあれほどの壮大な建造物が造られ、どうして滅亡してしまったのか。現代の日本にも当てはまる文明の本質を、それぞれの遺跡の写真を紹介しながら考えてみたい」と語った。
矢澤氏は、「遺跡を包む風景全体に心を打たれた。最初にみた時の感動は忘れられない」と述べ、その構造を紹介しながら「網の目のように無数に水路が走っており、アンコール・ワットは水の文明といえる。雨期に雨水をためて、乾期にそれを利用するシステムになっている」と説明した。
 また、幾何学的な平面展開、立体的な配置について「基本構造は時代を追って複雑になり、内容の豊富さ、芸術性の高さにつては、クメール民族の中に天才がいたことを感じさせる」と指摘。「人間は永遠に戦わなくてはならない業を背負っていると言いたかったのではないか。それと比べると、日本人は人間の本質をみていない」と語った。
 アンコール王朝と文明の滅亡については、遺跡群を貫流する川の河床の低下を取り上げ、「国際協力事業団(JICA)の調査によると、拡張指向に基づく過度の開発が経済力の衰退を招き、滅亡への第一歩となったという説がある。地球規模の環境破壊が問題となるいま、注目される解釈ではないか」と指摘した。
 さらに小澤氏は、アンコール王朝の隆盛期に君臨した敬けんな仏教徒のジャンバルマン七世が建てた仏教寺院から、首などを切断された仏像が多数発掘されたことを紹介。
 「ヒンズー教など他宗教の弾圧の反動で、王の死後、仏像などへの破壊活動が行われたと考えられている。アンコール王朝は二つの宗教が共存した平和的な国家ではなく、せめぎあいが行われていた。経済力の衰退と宗教対立という致命的な二つの打撃を受け、滅亡へと加速していったのではないか」と解説し、講演を終えた。



■ 関連記事
(株)文祥堂は1992年8月25日〜30日、創立80周年とカンボジア教育省への印刷技術援助10周年を記念して、
文祥堂イベントホールで「アンコールワット遺跡写真展」を開催いたしました。
今回の講演テーマにちなんで、当時の記録をご紹介します。

写真展の招待状・案内状
ユネスコプレス
新聞各社に掲載された「アンコールワット遺跡写真展」の記事
写真展会場の記録写真
カンボジア教育省印刷所(1991年当時)の写真
文祥堂のカンボジア支援についての新聞記事
「築地物語」の掲載記事
当時のアンコール・ワット

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