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前回までの文祥堂フォーラムのご紹介
第286回 フランス宮廷の食事作法
   
〜憧れのヴェルサイユ宮殿で王様のディナーを見学〜
2009年7月15日
 17〜18世紀、フランス国王の王宮ヴェルサイユ宮殿は、貴族ばかりでなく一般庶民や外国の旅行者たちにも開放され、宮殿の庭や内部へ自由に入り、眩いばかりの「鏡の間」はもとより、王様の寝室まで見学することができました。
 何と驚いたことに、ヴェルサイユ宮殿では王様と家族がディナーの席につき、食べているところを覗くことができたのです。
 太陽王ルイ14世は、フォークを使わず手で食べた方がおいしいといい、三本の指で肉を口に運び、王子たちにもそうさせていました。
 西洋料理のテーブル・マナーというと、とても緊張して肩の凝るものに思えますが、現在のような洗練された形に整えられたのは19世紀になってからのことでした。そこに至るまでの食事作法の流れをたどり、中世から18世紀にかけての想像を絶する歴史をお話しします。
(池田 まゆみ)



文祥堂フォーラム

文祥堂フォーラム

池田まゆみ氏写真

会場風景

池田まゆみ氏写真

講演資料

15世紀後半イタリア

タイヨワール

エキュエル

カトラリー
17世紀半頃

会場風景

会場風景

池田まゆみ氏写真
PROFILE ・・・・・・・・・・・・・・・・・

池田 まゆみ 氏 (いけだ まゆみ)
美術工芸史家
1954年東京生まれ。
学習院大学フランス文学科卒、同大学院人文学科博士課程修了。
ガラス工芸、陶磁器、銀器、室内装飾などヨーロッパ工芸の歴史と生活文化を研究。
「創立130年ドーム‐創造する伝統」2008年、
「国立エルミタージュ美術館所蔵エミール・ガレとドーム兄弟」2007年、
「国立エルミタージュ美術館所蔵エカテリーナ2世の四大ディナーセット‐ヨーロッパ磁器にみる宮廷晩餐会」2009年、
「生誕150年ルネ・ラリック‐華やぎのジュエリー・から煌きのガラスへ」(開催中)など企画監修。
著書「ルネ・ラリック」(平凡社)共訳「17世紀のガラス技法-ラルテ・ヴェトラリア」(春風社)


■ 講演内容(講演資料より)

1. フランス国王アンリ3世とフォーク 16世紀後半

「まず肉に直接手を触れることは決してない。フォークをつかうのだ。体を皿の上に突き出し、肉を襟にそって口までフォークで運ぶのだ。(中略)いかにそれがむずかしかろうと、この国では、肉を手で食べることは禁じられているから。(中略)それからアーティチョークやアスパラガス、豆などが運ばれてくる。フォークを使ってそれを食するその時こそ見ものだ」 アンリ3世(1551‐1589)側近アルチュール・トマ・ダンリ


2. フランス国王アンリ4世の食事 17世紀初頭

1594年の儀典書によると国王アンリ4世(1553-1610)の正餐(昼食)の準備は、毎朝9時に始まり、まず食事係り3名が食器保管室に赴き、最初に塩入れと肉きり包丁、ナイフとコップを、次にエシャンソン(お酌係り)が脚付きグラスを受け取る。ユイシエ(扉係り)を先頭に、オフィシエがそれに続き「ネフ」とこれらの食器を指定された部屋に運び、仮設のテーブルを組み立ててクロスを広げ食卓をしつらえる。王が席につくと、家来たちが行列を組んで恭しく料理を運び込む。護衛隊の射手二名を先頭に、ユイシエ、指揮棒(ステッキ)をもったメートル・ドテル(給仕長)、パン係り、その後に小姓たちが肉の大皿を捧げ持ち、さらに厨房係り、食器係り、最後にもう二名の射手が行列を締めくくる。彼らは王の身の回りの世話をする名誉ある上位貴族たちで、とりわけ食器の世話をする3名の食事係りとお酌係りは、名門貴族の中から選ばれた王の寵臣たちであった。


3. フランス国王ルイ14世(太陽王在位1643‐1715)とヴェルサイユ宮殿 17世紀後半

宮廷の役割
1 統治の手段としての宮廷    -貴族たちを「飼い馴らす」
                 -宮廷人以外の国民と外国人を圧倒する
2 洗練された儀礼作法の製作工房 -儀式をつうじて国王崇拝を維持
「ヴェルサイユを訪れ、見物することを許された宮廷人以外の一般のフランス人たちと外国人たちは、壮麗な宮殿とそこで繰り広げられる華やかな生活をみて圧倒され、ルイ14世の権勢と偉大さを思い知らされ。その結果、フランス人の場合はいっそう忠誠心を掻き立てられ、外国人は恐れをなし、フランスに対して弱気になった。」
<長谷川輝夫 NHK歴史再発見『日常のフランス史』より>


4. フランス国王ルイ15世(在位1715‐1774)と食事の楽しみ 18世紀

統治に関心の薄かったルイ15世は、プライベートな私室での生活を優先させて、愛妾ポンパドール夫人や気の置けない狩りの仲間たちとの私的な食事を好んだ。国王はヴェルサイユ宮殿本殿の中に始めてキッチンを設け自らコーヒーを入れて人々に振る舞い、多少料理づくりを楽しんだ。またパリから料理人を呼び寄せ美味を追求、ルイ15世紀時代に食事の値打ちは量から味へと変わっていった。また陶磁器製造技術の発達により、とりわけこの時代、磁器が登場したことで西洋人ははじめてほんとうの意味で食事の楽しみを知った。


5. 王族の食事を見物する人々

「食事の時間になると、スープを食する皇太子妃を見て、茹で肉をたべるプリンスたちを見た後、先王の王女たちのデザートに駆けつけようと、息を切らして階段を駆け回る人々で一杯だった。この見世物は地方から出てきた人々を喜ばせた」
<マリー・アントワネットの女官カンパン夫人の備忘録より>

◆ 用語
スプーン・ナイフ・フォーク(△カトラリー)
タイヨワールまたはトランショワール(肉切り台、初め硬いパン、のちに板や金属製に)
エキュエル(両手付き容器)
アシエット(銘々皿)
ビュッフェ(段飾り)
アントルメ(アントル=間、メ=料理)
クヴェール=1人分の食器(銘々皿とナイフ・フォーク・スプーン)
  Grand couvert(グラン・クヴェール)大膳
  Petit couvert(プティ・クヴェール)小膳
セルヴィス(サーヴィス)
  1. 給仕法 フランス式セルヴィス、ロシア式セルヴィス
  2. 食器セット

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